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2009年7月 9日 (木)

胡椒農家の糧

過日、田んぼを借りて田植えをしている知人と話し、「田植え」の学びは、「会社」の学びと違う、といった話題で盛り上がった。

彼は、新卒でコンサルに入るも、仕事が肌に合わず辞めてしまう。

今では、農業に興味を持ち、農業をすることで新しい価値を生み出したいと語る。

そんな特異な彼との会話で、口に入るものは“生産者の顔が見えることは大切だ”という話しをしていたのだが、逆に“生産者も消費者の顔が見えることは大切”であるとふと、感じた。

そんな感覚が頭を過ったのは、海士町(隠岐の島町)で漁をするため、沖まで連れて行って下さったことがきっかけ。

簡単に海士町のことを説明すると、島根半島の東北に約80km、フェリーで約2時間半ばかり行ったところにある人口が2581人(平成17年国勢調査結果速報)の町。

一時は過疎化が進み、財政破綻の危機もささやかれた。その折に、町長のリーダーシップと街の人の努力により、苦難を乗り越えようと挑戦している町だ。現在では、様々な産業復興政策に基づき、ユニークな「町おこし」を行うモデルケースとしてメディア等に取り上げられている。

そんな、町で見た漁師の働きっぷり。

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夜が明ける前から沖にでる。待ち合わせは、漁業組合の事務所に朝の4時。既に、何人かの漁師は集い、ストーブの上にお餅をのっけて食べていた。仕事前の腹ごしらえ。

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どんどん、沖の方へと漁船は舵を取る。

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当日は波が高く、船は相当ゆれていた。それでも、漁師の男たちはきびきびと持ち場につく。

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網を引き始めると鴎の群れがやってきた。

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もう一艘の船が網を持ち上げ、魚を中心に追いやる。だんだんと、魚が海面に近づいてくる。その魚を狙う鴎が、どんどん集まってくる。

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陽がのぼる前から働いている人がいる。魚を捕ることを生業としている人がいる。鮮魚は、かくして、店頭に並ぶのかと改めて想う。

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鍋の季節、月島の鮟鱇鍋を食べに行ったが、鮟鱇を自分の目で見た。確かに、提灯のようなものがついていて、気分が高まる。今、大海原を生きていた鮟鱇も、人の手により水槽に投げ込まれ。そのうち、息をひきとるのだろう。

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船上では、カワハギ、イカなどよくとれた魚を大きな網で、いくつかの水槽にわけていく。以前は、船一杯にとれた魚も今では、水槽数箱しかとれないとのこと。天候や自然の気まぐれに左右される仕事。海が荒れれば危険も伴う。

そして、漁を終えて漁港に戻ると漁船を待ち構えていた人が数人。

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ここで、採ってきたばかりの魚をコンクリートの打ちっぱなし一面に広げる。ここで、仕分けを行い、発泡スチロールにつめ、値踏みを行っているようだ。宿のオーナーが料理長が直接魚を買い出しにも来ていた。

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採ってきたばかりのイカとカワハギを漁労長が振る舞ってくれた。採れたての魚はウマイという言葉しか出なかった。僕らはおにぎりを片手にもくもくと上がり立ての魚を、空っぽのお腹に運んだ。

そんな、様子を見ていた漁労長は心なしが嬉しそうだった。寡黙な漁労長も「ごちそうさまでした」の一言に気恥ずかしそうにしながらも、喜んでいた。きっと、その喜びが明日の仕事の糧になるのだと思った。

だから、きっと。生産者も消費者の顔が見えることって大事だし、美味しいもの作りの源になるんだと思った。

農家もそうだ。消費者が、誰が作っているのか知りたいのと同様で、誰がどんな顔をしながら食べているのか。それを口にして、どんな感情をもつのか。知りたい筈だ。

サラリーマンもそう。

自分の仕事がどんな影響を与えるのか気になるし、自分の仕事が誰かを幸せにしていたら。僕は、明日へ糧になる。

胡椒農家もそうだろう。

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